【論文出版】出身国別の、都市・農村の自殺率格差

論文

このたび、研究論文がSocial Science & Medicineに掲載されました。スウェーデン・ストックホルム大学の研究者の皆さんとの共同研究です。論文はオープンアクセスなのでどなたでも読むことができますが、日本語で概要を説明いたします。

Mariko Kanamori, Naoki Kondo, Sol Juarez, Andrea Dunlavy, Agneta Cederström, Mikael Rostila. Rural life and suicide: does the effect of the community context vary by country of birth? A Swedish registry-based multilevel cohort study. Social Science & Medicine. March 2020. https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2020.112958 (OpenAccess)


世界的に農村では都市に比べて自殺率が高いことが知られていますが、スウェーデンではその傾向は男性で顕著でした。農村地域の住人の中でも、出身国によって自殺のリスクが異なっており、海外出身者は特に、都市・農村の自殺率格差が大きい傾向がみられました。

背景

世界的に国際的な移民が増加しているなかで、福祉国家として有名なスウェーデンにおいても、移民がどのように社会に適応していくか、議論が巻き起こっています。 国の移民政策や地域環境、移民に対する差別等により、移民は深刻な健康問題に苦しむ可能性があります。このような影響は、住んでいる地域によって異なる可能性があります。今回私たちは、メンタルヘルスに大きな影響を与える可能性のある地域要因として、都市・農村の違いに焦点を当てました。 スウェーデン全国民データを分析して、出生国別に、都市・農村の自殺率格差を検証しました。

対象と方法

スウェーデン全国民を含む大規模データベースを用い、2011年に20歳以上であった個人を2016年まで追跡したコホート研究を行いました。個人・近隣・市町村の階層構造を考慮した3レベルのマルチレベルモデルを用い、自殺の発生頻度の地域差を評価しました。

自殺率の都市農村格差を明らかにするだけでなく、そのメカニズムについて考察できるように、以下の工夫を行いました。

① 農村度を2つの異なる地理単位(市町村・近隣)で評価
農村と一口に言っても、どの地域単位で考えるかによって様々です。例えば日本なら、東京より北海道は農村かもしれませんが、北海道の中でも札幌と別海町は異なります。そのため、今回の研究では、「市町村」と、さらにそれより小さい「近隣」という2種類の異なる地理単位を用いて、農村度を評価しました。

② 個人の社会経済状況(所得・教育歴・婚姻状況・失業)データを使用
所得が低かったり、教育を受ける環境に恵まれなかったりなど、個人の社会経済状況は自殺率に関連することがこれまでの研究により明らかになっています。今回の研究では、都市・農村格差がどのくらいこうような社会経済状況で説明されるか、追加分析を行いました。

結果

スウェーデン出身を含む、全ての出身国の男性において、都市より農村の自殺率が高かったことが明らかになりました(図)。農村を市町村単位で評価した場合には、スウェーデン出身者では1.23倍、その他の北欧諸国出身者では1.37倍、その他のヨーロッパ諸国出身者では1.39倍、農村において都市より自殺率が高い結果となりました。農村を近隣単位で評価した場合には、スウェーデン出身者で1.24倍、その他の北欧諸国出身者では1.12倍、その他のヨーロッパ諸国出身者では1.42倍、難民の多い中東出身者では1.65倍、その他の国の出身者では2.89倍、農村において都市より自殺率が高い結果となりました。女性では、出身国によって違いはあるものの、全体的には農村より都市において自殺率がやや高い傾向が見られました。

また、市町村単位の都市農村の自殺率格差は、個人の社会経済状況によって説明されました。しかし、近隣単位の都市農村の自殺率格差は、個人の社会経済状況によって説明されませんでした。

結論と本研究の意義

出身国によらず、農村に住む男性では都市より自殺率が高い傾向があることがわかりました。さらに、外国生まれの人において、自国生まれの人よりも、より農村的な社会環境の影響を受けている可能性が示唆されました。農村的な市町村において、経済的資源や雇用機会等が少ないことが、高い自殺率の背景にあることが考えられます。さらに、農村コミュニティにおける、外国生まれの人に対する差別や偏見、孤立等が、自殺リスクの増加につながっている可能性があります。今後、メカニズムの解明や予防方法についてさらなる研究を進めていく必要性が示唆されました。

お問い合わせ先:金森万里子(Department of Public Health Sciences, Stockholm University)mariko.kanamori [a] su.se

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