論文が、掲載紙「Journal of Epidemiology」において、過去1か月で最も閲覧数が高かった論文に選ばれました。(12月2日、同紙公式ツイッターにて)
注目を集めたのは、日本の乳児死亡率の職業間格差が拡大傾向であることを明らかにした研究です。
近年日本の子どもの死亡率の都道府県間格差が拡大傾向であることが指摘されていますが、職業間の格差に着目した研究はほとんどありませんでした。このたび、政府公表のデータを用いて、世帯の主な仕事別の乳児死亡率を比較しました。その結果、1999から2017年の平均の乳児死亡率は、従事者数100人以上の企業などで働く世帯に比べて、農家世帯は約2倍、無職の世帯は6.5倍高かったことが明らかになりました。また、乳児死亡率の職業間格差は過去19年間で拡大していました。さらに、人口密度が低く農家の割合が高い都道府県では、職業別乳児死亡率の格差が小さい傾向がありました。世界的に見ても乳児死亡率が最も低い国の一つである日本において、乳児死亡率の職業間格差が大きくなっていることが明らかとなりました。職場や家庭環境、経済状況、医療機関の利用しやすさなどが背景にある可能性があります。さらなる調査を行って原因の解明に努めるとともに、妊婦や子どもを守る地域環境づくりを進めていく必要があると思われます。
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Kanamori M., Kondo N., Nakamura Y. (2021). Infant mortality rates for farming and unemployed households in the Japanese prefectures: An ecological time trend analysis, 1999-2017. J Epidemiol., 31: 43–51. https://doi.org/10.2188/jea.JE20190090
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